転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


364 ベニオウの実のお酒を持って



 時は前回の少し前にさかのぼります。

「僕とお兄ちゃんたちだけで森へ行くの?」

「ええ。昨日、お父さんがアマンダさんのお酒を呑んじゃったでしょ? アマンダさんはオーナーさんも一緒に呑んだのだから気にしなくても大丈夫と言ってくれたけど、やっぱり悪いもの」

 今日、僕たちは村に帰る事になってるんだけど、その前にお父さんとお母さんは冒険者ギルドまで行ってポイズンフロッグや幻獣をやっつけたお金をもらいに行かないといけないんだ。

 それにね、村へもいろんなのを買って行かないとダメだから、その後に露店街や商店にも寄らないとダメでしょ?

 だから結構な時間があるし、その間に僕はお兄ちゃんたちと一緒に森へ行って、ベニオウの実からお酒を作って持って来てって、お母さんに頼まれちゃったんだ。

「うん、いいよ。じゃあさ、ロルフさんたちの分も作ってきていい?」

「ええ、いいわよ。お酒にする時に必要な樽は門に行くまでにある屋台街で買えるだろうから、それを買って行ってね。お金はディックに渡しておくから」

 こうして僕とお兄ちゃんたちは、また森へと行く事になったんだ。


「流石に3度目ともなると慣れてくるな」

 最初に採りに来た時はあんなに苦労したベニオウの実だけど、ディック兄ちゃんの言う通り何度かやってるうちに慣れちゃったんだよね。

 おかげで登り棒もちゃんとすぐに実がいっぱいなってる太い枝に移りやすいように作る事ができたし、ベニオウの実もかごに入れて上からするすると下ろしてくれるもんだから、僕の前は真っ赤なベニオウの実でいっぱいになっちゃった。

「お兄ちゃ〜ん。もうこれくらいでいいと思うよ」

「おう、解った。それじゃあ、降りていくよ」

 こんだけあったら、この樽の中いっぱいになるよね。

 そう思った僕は、お兄ちゃんたちにもういいよって声を掛けてから、ベニオウの実をお酒にする作業に入ったんだ。

「まずは洗わないとね」

 僕は目の前のベニオウの実を何個かかごに入れると、その上からドリンクウォーターの魔法で水をじょぼじょぼ出して洗ってったんだよ。

 でね、今度はそのベニオウの実をナイフで半分に切って、中から種を取り出しては樽の中に入れてったんだ。
 
「ルディーン。種取は俺たちがやるから、お前は洗って行ってくれ」

「そうだね。全部ルディーンがやってたら、時間がかかりすぎるよ」

 でも、木の上から降りてきたお兄ちゃんたちがそれを見て、そんなんじゃ帰るのが遅くなっちゃうって種取をやってくれることに。

 おかげで思ったよりずっと早く樽ん中がベニオウの実でいっぱいになっちゃった。

「それでこれをどうするんだ?」

「えっとね、まずはこの実をつぶして、それから僕が醸造ってスキルでお酒にするんだ」

「そうか。それじゃあ、さっさとやってしまおう」

 そう言うとお兄ちゃんたちは樽に手を突っ込んで、あっという間に中のベニオウの実をつぶしちゃったんだ。

「こんなもんでいいか?」

「うん。大丈夫だよ。でも、潰したら減っちゃったね」

「ああ、そうだな。もうちょっと足した方がいいかな?」

 でも、あんなにいっぱいあったベニオウの実が、潰したらかなり減っちゃったんだよね。

 と言う訳で、お兄ちゃんたちはまた木の上へ。

 もういっぺん目の前が真っ赤なベニオウの実になるまで採ってくれたもんだから、僕はその実を樽の中に足して、それに醸造のスキルを使ったんだ。

「おっ、ほんとにお酒の匂いがするな」

「ルディーン、これで終わりなの?」

「ううん。これにね、熟成ってスキルを使うと出来上がるんだよ」

 そして仕上げに全力の熟成スキル。

 二度目だからなのか、こないだのよりもっと凄く熟成した気がするけど、鑑定解析で調べたらちゃんとおいしいお酒になってるって出たからこれで完成だ。

「後は布で実とお酒とを分けないとダメだけど、分けた実はお菓子の材料になるからこのまんまアマンダさんのとこに持ってこ」

「そうなのか? 確かに、それならその方がよさそうだな」

 と言う訳で運んでる最中にこぼれちゃわないようにって樽に蓋をすると、フロートボードの魔法を使って僕たちはこのお酒を街まで持って帰ったんだ。


「あら、ルディーン君。それにお兄さんたちも。いらっしゃい、今日はどうしたの?」

「あのねぇ、昨日お父さんがお酒、いっぱい飲んじゃったから作って持ってってってお母さんが」

「あら、そんな事してくれなくてもよかったのに。でもありがとう」

 僕たちがお酒の入ったおっきな樽を持っていくと、アマンダさんはすっごく喜んでくれたんだよ。

 でね、そこでもお兄ちゃんたちは手伝ってくれてみんなで酒搾り。

 おかげであっという間に、お酒と実が別々になっちゃった。

「それで、この実と皮は私が貰っちゃっていいの?」

「うん! だって僕、こんなのあったってどうしようもないもん」

 お酒と別々になった実と皮はお菓子の材料にしてねって、アマンダさんにみんなあげちゃったんだ。

 だって村に持って帰っても、僕じゃこんなにいっぱい使えないもん。

 でもアマンダさんだったら、持ってきたお酒と一緒にお菓子にする事ができるもんね。


 アマンダさんと様子を見に来たオーナさんに搾ったお酒を上げると、僕たちは残ったのを持って冒険者ギルドへ。

 思ったより早く終わったもんだから、まだお父さんたちがそこにいるんじゃないかって思ったんだよね。

「おい、ディック。待ち合わせはここじゃないだろ!」

「だって、ルディーンが早く終わったから冒険者ギルドに行ってみようって言うもんだから」

 そしたら思った通り、そこにはまだお父さんたちが居たんだけど、そこには一緒にギルドマスターのお爺さんまで居たんだ。

「おお、それがルルモアの言っていた、ベニオウ酒か」

「早速目を付けたか。こうなるのが解っていたから、待ち合わせを他の場所にしたと言うのに」

 お父さんはね、僕が作ったお酒が見つかったらギルドマスターのお爺さんに取られちゃうって思ってたみたい。

 だからほんとは露店街の近くで待ち合わせって事になってたんだけど、僕たちが冒険者ギルドに来ちゃったもんだから、ちょっとむすっとした顔になっちゃった。

 でもね、そんなお父さんにお母さんは何言ってるのって。

「そもそも、ルディーンたちが森に行く事になったのはハンスがアマンダさんのお酒を呑んでしまったからでしょ? もともとないはずのお酒なんだから、少しくらい分けてあげなさい」

「確かにそうなんだが……」

 ほんとだったら村にいっぱい持って帰れたのにって拗ねるお父さん。

 でも、お母さんに叱られたもんだから、ギルドマスターのお爺さんにも僕が作ったお酒を分けてあげる事にしたんだ。

「ギルマス。確かにシーラの言う通りだから渡すけど、うちのルディーンが造った酒だ。飲めるのはこれが最後だろうから大事に呑めよ」

「おう! 小さな子が頑張って造ったものだからな、大事に飲ませてもらうよ」

 お父さんとギルドマスターのお爺さんがそんなお話をしていると、その間にこっそりとルルモアさんがおっきめのガラスビンを1本持って近づいてきたんだ。

「シーラさん。私にも少しもらえないかな?」

「ええ、いいですよ」

 昨日のはお父さんたちが飲んじゃってあんまり残ってなかったし、使った材料もアマンダさんのだったからルルモアさんはもらえなかったんだって。

 でも今日はおっきな樽にいっぱい作ってきたから、ルルモアさんにあげる分も十分あるんだ。

 と言う訳で、ルルモアさんが持ってきたビンに樽からお酒を入れてあげるお母さん。

 そしてそれが終わって、ルルモアさんがどっかに言っちゃった後、お父さんとのお話が終わったギルドマスターのお爺さんがちちゃめのビンをもってお母さんのとこに来て、これにお酒を入れてって頼んだんだよ。

「えっ、これにですか?」

「ああ。カールフェルトがな、この後ルディーン君がお世話になっている錬金術ギルドの人たちにも持って行かないといけないからあまり多くは渡せないと言ったものでな」

 ギルドマスターのお爺さんの言う通り、この後でロルフさんたちにもお酒を持って行ってあげるつもりなんだ。

 でも、流石にこんなにちょびっとだと可哀そうだよね。

 だってルルモアさんにもさっき、おっきなビンにいっぱい入れてあげたんだもん。

「確かにそうですけど、流石にこれでは少なすぎませんか?」

「おい、シーラ。そんな事言ったら……」

「おお、そう言ってもらえるとありがたい。ではこの便があと2本あるから、3本分貰えるかな?」

「いいですよ」

 ギルドマスターのお願いに、むすっとした顔になっちゃうお父さん。

 でもね、さっきルルモアさんがん持ってきたビンはギルドマスターのお爺さんが持ってるビンの5倍くらい入るのだったんだ。

 だからお母さんはいいよって笑いながらギルドマスターのお爺さんからビンを受け取って、その中にお酒を詰めてあげたんだ。


「最後は錬金術ギルドの人たちへ持っていく分だけど、流石にお世話になっている方たちだからあらかじめ何かに詰めて持って行った方がいいわよね」

 お母さんがこう言い出したもんだから、僕たちは先に村へ持って帰る買い物をして、その時に一緒に買った入れ物にお酒を入れて持ってくことになったんだ。

 でもね、その時買った入れ物を見たお父さんがちょっと大きすぎない? って言うんだ。

「おい、シーラ。そんな大きなものに入れたら、酒が無くなってしまうだろ」

「何を言ってるのよ。錬金術ギルドにいるロルフさんには、ルディーンがこの街に来るときのための部屋まで貸していただいているのでしょ? それならこれくらい持っていくのは当たり前だわ」

 お母さんが買ったのは小さな木の樽を2つ。

 でもこれに入れちゃうと、樽の中のお酒がものすごく減っちゃうんだよね。

 だからもっと小さいのにしようよってお父さんは言ったんだけど、お母さんはこれじゃないとダメって。

「ルディーンも、これくらい持って行った方がいいと思うわよね?」

「うん! ちょびっとよりいっぱいの方がいいって、僕も思うよ」

 結局最後はいつもみたいにお母さんが言う通りになって、僕たちはお酒の詰まったちっちゃな樽を持って錬金術ギルドへ。

 そこにはまだロルフさんは来てなかったんだけど、ギルドマスターのバーリマンさんが居たんだよね。

「バーリマンさん。僕、発酵と醸造、それに熟成ってスキルが使えるようになったんだ」

「へぇ、それはすごいわね」

 だから僕、新しいスキルを覚えたんだよって言ったら、すごいねってほめてくれたんだ。

「えへへっ。でね、それで作ったお酒持ってきたんだよ。僕、村に帰らないとダメだからここに置いてってもいい?」

「ええ。今日も多分午後には来ると思うから、ルディーン君からの贈り物だって渡しておくわ」

 ほんとだったらロルフさんにもスキルを覚えた事、教えてあげたかったんだけど、もう村に帰らないとダメなんだよね。

 だから僕はロルフさんのお酒もいっしょに渡して、バーリマンさんにバイバイしたんだ。

「また遊びに来てね」

「うん! また今度ね」

 こうして僕たちは、いっぱいのお土産と、ちょびっとになっちゃった樽のお酒を馬車に載っけてグランリルの村へと帰っていったんだ。


 流石にこの話を2話に分けるわけにはいかないだろうとかなり駆け足になってしまいましたが、そのおかげで長かったイーノックカウへの旅行?編も今回で無事終了する事が出来ました。

 とは言っても、この後にはイーノックカウで覚えたいろいろな事を村で試すことになるので、ある意味イーノックカウ編が続いているともいえるのですが。

 でもまぁ、次回はそれらとは全く関係のない話になるんですけどね。流石に村の人たちとの交流もしないといけませんからw


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